2004/12/29

相場という名の迷宮の出口を求めて

 

 今年ももう少しで終わりとなりますね。前回が学習のコラムだったので、今回は個人投資家が誰もが一度ははまる「迷宮」について書きたいと思います。
 実はつい最近、投資における「プロ」とはどういう人をいうのだろうか?と考えたことあるんですけど、僕のような相場のブローカー業務に従事している人を言うのか、あるいは相場で飯を食おうとしている個人投資家のことをいうのか、それがいまいち定義としてわからなかったんですよね。
 ただ、「プロトレーダー」という言葉を使った場合、大体は後者のことを言うことが多いみたいです。つまり、相場で収益を得ることが仕事となっている方たちですよね。そうなると、そのプロトレーダーの人たちのプロとしての実力もピンキリで、プロとは名ばかりの人もかなり多いようです。

 今回、そういったプロトレーダーの友人や僕の体験を交えて書くのですが、「一目均衡表」でも、よく使われる「移動平均線」でも、テクニカル分析手法なら何でもいいのですが、自分の恣意的な売買で儲からないと考え始めた投資家は、次の段階でパソコンなどを使ったテクニカル売買に入り込もうとします。
 手始めに過去2年程度の日足の株価(相場)データを入手し、それを使って各種テクニカル指標をもとにクロス・オーバー法で売買サインを出し、結果を集計して、パフォーマンスを測定する。クロス・オーバー法というのは、株価が設定した移動平均線を越えたら「買い」、割り込んだら「売り」、あるいは性格の違う二つ以上の指標を使って一方が他方を越えたら「買い」、割り込んだら「売り」とサインを出して、その株価で売値と買値を決定して売買するやり方です。

   まずは「移動平均線」から入るのが普通で、第一段階は単純クロス・オーバーから始める。つまり、「終値」が「25日移動平均線」を超えたら「買い」、割り込んだら「売り」という手法です。
 それをしばらくやってみると、第二段階では「25日線」ではなくて、もっと別な「日数」「変数」を使った方がパフォーマンスが出るのではないかと考えて変数を2、3、4、5…と変えて計算を始める。場合によっては、「1、1、2、3、5、8…」と続くフィボナッチ級数や、「9、17、26、33、42、65・・・」と続く一目均衡表基本数値がよいのではないかと検索します。そして、過去のデータでたまたまパフォーマンスが出ると「これでいける」と確信を持って売買する。だが、結果は散々たるものになる。

 何がいけないのか。考えられるのは、自分が扱う銘柄と使用データに問題がある場合です。そしてその根元は、トレンドの強さにあります。仮に使用データ期間中に強いトレンドが含まれていれば、結果はおそらく良好のものとなります。ところが、たまたま集めたデータ期間中にトレンドがないか、あるいはトレンドが完結していなかったりすると、中途半端なところから売買することになり、パフォーマンスがとれない場合も、その逆の場合もあります。
 そこで2年ほどのデータではダメだと気づき、今度は10年間のデータを集めて同じ操作を繰り返すことになる。また、日足では「チャブツキ」や「ダマシ」が多くなるので週足データを使い、さらに月足データへと進む。

 こうなると、マーフィーの著書「先物市場のテクニカル分析」にあるように、2本の移動平均線を使った「ダブル・クロスオーバー」などを試すようになるまで時間はかからない。これも最初は「9日」と「25日」などの2本を使うが、最終的には短期線として「2、3、4…」、長期線として「5、10、15・・・」などを設定し、あらかたパフォーマンス測定を行なったあとに、より儲かりそうな日数の組み合わせを選択する。これが第三段階です。
 そして、これも比較的短期の変数と長期の変数の組み合わせがパフォーマンスを出すものの決定打がつかめない。

 そこで今度は、第四段階として「移動平均線」と「ストキャスティクス」、あるいは「RSI」「MACD」・・・とオシレーター系指標の組み合わせに入ります。
 さらにその過程では、「終値」は引けてみないと確定しないのに、シュミュレーションでは確定しない終値で売買サインを出そうとしていることに気づき、サインと売買を考え始める。
 このときよくやるのは、その日の「終値」でサインを出し、翌日の「始値」で売買する方法です。もちろん「終値」と「始値」の価格差に『うまみ』が隠されていることに気付くのですが、これもどうもうまくいかないことが多いと分かる。
 そこでデータを「前場」と「後場」に分け、「前場の終値」でサインを出し、「後場の寄り付き」で売買しようとする。

 第五段階では各種テクニカル指標を総動員して、それらの流れがすべて変わったところで売買サインを出して、売買を試みようとする。しかし、コレがなかなかサインが出ない。
 そこで各種テクニカル指標にウエイトを付け、それぞれのサインに点数を持たせて合計がいくら以上なら買い、いくら以下になれば売りと点数制に発展させる。

 ここまでやる人はもうかなり相場にはまっている人に違いないのですが、最後は数学で言うところの「微分」の考えを導入し、移動平均線の傾きや変化率などを計算し始めます。当然、波動が邪魔なので、標準化を行い、複雑怪奇の世界に入り込んでいく。
 よく新聞広告に「何億通りの売買サインの中からあなたに最適なものを提供します」なるものがありますが、いわばこの世界です。

 結局これらをやり尽くした投資家は最後に、「それほどパフォーマンスが出ない」と嘆くのです。
 原因は一つには、先ほど述べましたが、使用データ期間内の相場つきの問題もあるでしょう。だが先物の世界では「売り」も「買い」も考えますが、現物株取引しか頭にない投資家は、「買い」だけを考えてパフォーマンス測定する。そういう問題もあります。
 また、バブル絶頂期のように変動幅が大きい局面と、変動幅が小さい局面の違いもパフォーマンスに対する影響が大きいでしょう。
 もう一つ、これは先物と現物の違いもありますが、先物なら証拠金の増減はあっても一枚あたりの取引で使用する証拠金はそれほど変化しないでしょうが、現物なら1000円の時と200円の時とでは、単純に価格変化を集計しても、実際に投下できる株数を加味しないと比較にならない場合もあります。

 つまり、このように相場に勝ちたい一心で熱心に探求しても、結局これという方法が見つからないというのが、多くの投資家の声だったりします。これは僕も例外ではありません。
 一般に知られているテクニックをどれほどうまく取り入れても、儲かるときは儲かるし、儲からないときは儲からない。そして、複雑系になればなるほどパフォーマンスの低下に直面します。
 そこで、あるとき、これまで考えシミュレーションしてきた全てを捨てて、次の新たな段階に入ります。これが「単純化」です。

 「単純化」の話までするととても書ききれないので別のコラムに譲りたいと思いますが、今回言いたかったことは、テクニカル分析に頼れる相場状況と頼れない相場状況があること、そして短期売買の究極がデイトレードということになりますが、それを従来のテクニカル分析で100%読みきるのは無理だということですね。
 そこには勘やその場で参考にする指標などを判断するセンス、そういったものが問われてくると思いますが、個人的に思うのは、そういったものを含めて「勉強」あるいは「研究」というのをしていかないと、素人ではプロトレーダーたちの食い物にされるということです。

  それでは、今年ももうあと数日ですが、よいお年をお過ごしください。  



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