2004/5/30
アメリカの金利利上げについて考える
為替相場も円高・円安の見通しがつけづらい段階にきました。現在、ちょうど110円くらいですが、105円の円高局面から115円まで短期で円安になり、今110円。チャートだけ見てたら、単なる半値戻りなのか、100円割れに向かうための助走だったのか迷うところです。
そんな中、日増しにアメリカの利上げ観測が強まっています。実際、先ほどの短期の円安局面は「利上げをする」という発言後の話ですから、実質ゼロ金利からの上昇となると各方面に与える影響は大きい、ということですね。
さて、アメリカの景気はある程度順調に推移しており、デフレ懸念が消えるとともに利上げが秒読みの状況となっています。FF(フェデラル・ファンド)レートは現在1.00%(誘導目標)ですが、先物は12月限がすでに2.00%を超えています。これはマーケットが年内に0.25%の利上げを4回(計1.00%)想定していることを意味します。
5月4日のFOMC(連邦公開市場委員会)の声明では、それまでの「緩和策の解除に当たっては忍耐強くなれる」という表現に代わって、「おそらく慎重なペースで緩和策を解除できる」という文言が登場しました。これはFRB(米連邦準備理事会)が利上げの準備に入った証拠と受け止められています。
実際、そのあとに発表された経済指標、特に4月の雇用統計は非農業就業者が3月の33万7000人増に続き、28万8000人も増加、マーケットでは利上げを催促するような動き(金利上昇、株価急落)につながりました。なにしろ、事前予想は15万〜16万人増だったわけですので、そのギャップのインパクトがすごかったわけですね。
強い景気(良好なファンダメンタルズ)は株価にはプラスを与えるはずですが、マーケットは利上げの悪影響をすでに織り込んだ形です。利上げをなぜ嫌いのか?それはアメリカ経済が実質ゼロ金利に慣れてしまっている上、低金利が住宅価格の上昇(資産効果)、ローンの借り換えなどによって個人消費を支えてきたからです。自動車販売の好調もゼロ金利キャンペーンに負うところが大きい。
ちなみに、三菱自動車の北米事業の失敗(巨額損失の計上)は頭金ゼロ、金利ゼロ、当初の支払いゼロのいわゆる「ゼロ、ゼロ、ゼロキャンペーン」に伴う不良債権の急増によるものと言われています。金利が上昇すれば、ゼロ金利キャンペーンはできない。ヘッジファンドなどはコストゼロに近い資金の手当てに困ります。だから、アジア市場、商品市場から資金を引き上げたんです。したがって、これらのマーケットは大波乱になりました。これほどアメリカの利上げのダメージは大きいのです。
さて、今後の焦点は利上げがどのタイミングで、どの程度の幅で行われるかにかかっています。FOMCの開催スケジュールは6月29日〜30日、8月10日、9月21日、11月10日、12月14日・・・となっています。常識的に大統領選挙前後の利上げは考えにくいので(ちなみに大統領選挙は11月2日です)、FFレートの先物から判断すると、6月30日に0.25%、8月10日に0.25%、12月14日に0.25%〜0.50%の引き上げが行われる、という予測が立てられると思います。
ただ、グリーンスパンFRB議長の再任がすでに決まっているのですが、「彼はこの時期に景気を悪化させるような乱暴な形での利上げを強行するとは思えない」との声もあります。それに、原油価格の高騰は気掛かりですが、他の商品市況は反落気味です。景気過熱感は薄い、インフレ懸念も少ない、といった状況を考慮すると、FFレートの先物が示すような1.00%の利上げは年内はならないのではないでしょうか。
商品市況の上昇を支えてきた“中国特需”も強烈な金融引き締めによってピークは過ぎつつあります。日本発の過剰流動性もマネタリーベースの伸び率縮小(2月16.2%、3月11.9%、4月6.6%)が示しているように、消えました。また、2003年度に約33兆円あった為替介入も3月30日以来行われていません。これは世界的な規模での金融ひっ迫につながります。
中国の金融引き締めはかなりドラスチックだと思います。「強制発動」との声もあるくらいですから。中国のGDP(国内総生産)は世界の4%を占めているに過ぎませんが、石油需要は7%、消費量の伸びだけでみると、35%を占めています。GDPの伸び率は2003年が9.1%、今年は1月〜3月が9.7%、4〜6月が13%予想という高い伸びになっています。これが原油価格を高騰させた面があります。
その中国が総需要抑制策に動いています。これはアメリカ経済にとってプラスではないでしょうか。ガソリン価格が落ち着けばアメリカの大幅利上げ圧力も薄れるでしょうから。
なお、アメリカの大統領選挙の年には民主党現職のときは原油高、共和党現職のときは原油安という“経験則”があります。これによると、原油高はそろそろピークアウトする、という見方ができます。
また1984年以降、為替(ドル)は大統領選挙の年は12.4%の変動率に過ぎず、その他の年の平均変動率19.0%を大きく下回っています。つまり、大統領選挙の年は為替の動きが小さいということですね。したがって、円相場は当面1ドル=110〜115円のゾーンでのもみ合い、という結論になります。
いずれにしろ、『過去の経験則』をそのままに相場が動くということもまたないのですが、個人的には可能性を多角的に分析しきることが、相場観を培うことだと思っておりますので、今回はこのような予想となりましたが、みなさんで年末にでも検証していただければと思います。