2003/7/31
デフレに対する現状と理解について思うこと現・日銀総裁の福井俊彦総裁が日銀の金融政策について「日本銀行による資金供給を、経済活動の活性化やデフレ克服に結びつけていくことが重要な課題だ」と強調したのは、今月の21日に行われた日本銀行の支店長会議においてです。そして、「脱デフレ」というキーワードは、今回に限らず、あらゆる場面で出てきているのですが、なぜそんなにまでデフレが騒がれるのか?ということですよね。デフレにより物価が安くなると、安くモノが手に入るかわりに、売り上げも落ちて、生産部門である企業の景気が悪くなる。そして、景気が悪くなるとそこで働く人間の賃金も下がり、買いびかえを引き起こす形で消費が落ち込む。これがデフレの基本構造であり、その連鎖が「デフレスパイラル」というわけですね。言い方を変えると、デフレがデフレを呼び、厳しい経済状態を抜け出せないでいるのが日本だということです。デフレは日本経済において悪いことであると言われていますが、昔は良いことだとされたんです。インフレが高すぎる時には、少しはデフレになってもらいたいと言ったものだからです。今となっては、デフレが行き過ぎて「これではひどすぎる」と言うんですから、かなり矛盾してますよね(笑)。でも、これは矛盾であって矛盾ではないわけです。なぜなら国民が「生活の仕方を変えていったから」です。インフレのときには「お金を早く使ってしまえ」、デフレの時には「なるべく出費を抑えよう」。だから、余計にデフレになる、ということなのです。これは逆もまた真なりなので、インフレの時もインフレが加速します。個人的に、面白いなぁと思うことがあります。デフレになって一般的に「デフレは悪い」と言われる割に、国民一人一人がすべからく不幸のどん底かっていうと、そんなことないんですよね。お金をなるべく使わないように使わないようにとなったおかげで、お金を使わないで時間を使うとか友達と遊ぶとかそういう楽しみが見つかった。だから国民は割と落ち着いているわけです。お金を使うことが幸せかっていうと、そんなことないわけで、僕の友人にもボランティアとかに参加している友人がいますが、それなりに楽しそうにしていますよね(笑)。あとは、盆栽や散歩とかを趣味にする人や犬や猫などを飼う人など、お金を使わない遊びや生き物を飼うことで喜びを見出す人とかが増えてきました。ついでにいうと、不景気で家に帰るのが早くなったサラリーマンの家庭が、それによってコミュニケーションを取る時間が増えて家庭円満になったとかそういう話も聞きますから、悪いことばかりではないってことでしょう。デフレに対して思うことは、良いか悪いかっていうことより、「人間によってどうにかなるのか?」ということを考えたときに、かなり難しいのではないかということです。国民が意外とデフレに慣れてしまい落ち着いているのに、商売する人たちだけが、政府に対してデフレを直してほしいと言っているわけですから、頼まれる方も政府自体にはそれをなんとかする力がないわけですから、余計に無理をして苦しくなってしまうわけです(笑)。人間の長い歴史においてインフレにしろデフレにしろ、それが避けられない運命だと理解すれば、大切なのはそれといかにして仲良く付き合うかという視点だけだと思います。過去約200年あまりのアメリカの物価の推移などをみると、インフレというのは20世紀後半の40〜50年の間の現象だというのがわかるのですが、これは逆にいうと、それ以前はデフレが当たり前だったということです。だから、人類の歴史は必ずしもインフレばかりで、デフレが異常だというわけではないんです。ただ、それが行き過ぎたときに、初めて「どうしよう?」という選択肢が生じてくるというだけなんですよね。では、今のデフレに問題はないのかと考えたときに、どうなのでしょうか?それは残念ながら問題があるわけです。率直に言って、それが何かというと、デフレがさらに深刻な景気悪化をもたらし、経済システムを破壊してしまうのではないかという懸念です。もう一つ言うと、1930年にアメリカの大恐慌がありましたが、それと同じことが起こるのではないかという不安ですよね。そのような不安がなぜ起こるのかというと、そもそもデフレというものが、お金の借り手に非常に大きなダメージを与えるからだと言うことです。たとえば、今日1円借りたとして、明日返さなければならないという時に、デフレによって貨幣価値が上がってしまって2円返さなければならないとしたらどうでしょう?そうなるとお金を借りて事業をする人は困ってしまいますよね。お金を借りて所得を生み出す主体は資本主義経済、市場主義経済においては企業部門なのですが、その企業部門が苦しくなってしまうと、給料が下がったり、雇用が減ることによって、経済全体が悪循環に陥ります。それが一番懸念されるデフレの悪い側面というわけです。僕自身はデフレはまだあと数年は続くと思っていますが、これからの時代を読む上で、将来取るべき投資スタンスや生活スタイルというのは必ずあると思います。次回のコラムでは、そこらへんを深く掘り下げた上で、現在のデフレの段階から長い視点での資産運用について僕の意見を書きたいと思っています。