2003/2/16
為替相場の現状とこれからの動向
 
 
 少し資産運用という部分から外れているような気がしますが、今回は為替をテーマに少し書きたいと思います。個人的な相場観も書いていますが、あくまでも個人的な意見として聞いていただければと思います。
 
 今年の為替相場はたぶんドルもユーロも非常に面白い展開になると思いますが、日本当局が1月に隠密(覆面)介入したということで、一度117円前半に入った円高の流れが、ここにきて少し一服した感があります。ですから、今も為替は120円付近で前後していますが、イラク情勢の結果待ちで市場も揺れ動いていると言えます。
 
 ところで、今回の覆面介入っていうのは、個人的には面白かったです。ここ何年も日本当局が為替市場に介入するときには、これ見よがしの介入を繰り返して来たんですけど、今回は117円50銭付近までで黙って待っている、そこにマーケットが近づいてくると自然と取引ができて、そこから先は進ませないという措置をとったわけですね。ですから、マーケットでは最初、これは介入しているのかどうかわからない、という疑心暗鬼になった分だけ、じわじわと効果が効いて一定の成果を上げることができたという形になっています。これって、江戸時代とかの闇討ちとかに通じるモノありますよね(笑)。見えない敵ほど怖いモノはありませんから。
 
 では、なぜこのような形を取ったのか?ということですよね。
 一つは、奇しくも榊原英資さんが財務官のときには、大々的にアナウンス効果を狙って、大規模かつ目立つ介入をやっていたわけですけど、それはそれでマーケットで目が慣れてきた。だから、効果が薄くなってきたから、その分だけ今回は少し違うやり方でマーケットの疑心暗鬼を呼ぶという戦略転換を図った、という面があります。
 そして、もう一つは、少し違う面で、実はアメリカの方からあからさまな通過誘導・為替誘導はしない方が良いという声が入っているといった中で、アメリカではスノー次期財務長官が就任前だったということもあって、そういう政治問題化するような目立つ介入はしたくないという配慮もあったんだと思います。
 
 よく「今、日本を買う材料はないんだから、必ず円安にいきます」と言うアナリストの人は多いんですけど、これって日本しかみていないとそういう相場観しか立てられないんですよね。ただ、よく覚えておいた方が良いのは、為替相場っていうのは、各国間のトップの意向、そして話し合いなどでも動いているということです。だから、株価は政府がコントロールできないけど、為替相場は政府がコントロールできるものの一つですから(口先介入など)、ドルであれば日本とアメリカの力関係なども考えないといけないと言うことですよね。
 
 117円50銭の介入、これ自体はこれからもあるかもしれませんが、僕は今回の介入とそしてあともう一回くらい介入をやるかやらないかのところでこの水準での介入は打ち止めになると思っています。要するに円高ですよね。というのも、当面はマーケットの底を相当切り返してくるという事で、110円後半から120円くらいのところで一進一退を繰り返すと思いますが、その後も考えますと、経済環境はなんら変わっていませんから、やはり円高ドル安の地合い自体はじわじわと効いてくるんだろうと思っています。
 
 日本経済が悪いから円安になるという考え方は、実は昨年の秋から年末にかけて支配的だったんです。だけど、逆に僕は日本経済が悪くなればなるほど円はむしろ割高になると言っていました(日記でも散々今年は年末から年明けの円安はないって言ってました。というのも、実は統計とると過去10年の間8年か7年は全部年明け円安になってるんですよね)。
 それはなんでかというと、円安論者の人たちは、テキスト的な理解として、「経済が悪い」→「円安になる」という流れの間には、「経済が悪い」→「金利が下がる」→「日本からお金を流出しやすくなる」→「円安になる」という流れがあると思っているのですが、実際は今の日本を考えますと、経済が悪いけど金利ももうほとんどゼロで動かない、その一方でデフレ懸念、マイナスのインフレ予想がどんどん深まっていってしまいますから、実質金利は逆に上がってしまうんですよね。しかも景気が悪いから投資家はリスクを取らなくなってしまう(個人向け国債が人気あるのがいい証拠ですよね)。結果的にわざわざ国境を越えて、外にお金を持っていこうという力が出なくなりますので、円は高くなりがちになってしまうということです。
 
 では、逆に海外から見た円を買うとか買わないと言うことからするとどうなるか?これは本当は実質金利が高いということは、経済のパフォーマンスがいい、だから本当だったら通貨を買うことになるんですけど、日本の場合は金利がゼロまで下がったので、本当はマイナス金利でもいいのに、否応なく実質金利だけが高まってしまうジレンマに陥ってしまいました。この高すぎる実質金利は日本のパフォーマンスをさらに悪くしますから、海外のリスクマネーはより日本に入って来にくくなってしまいます。このあたりが日本全体のお金の動きをさらに鈍くしているという面があります。デフレのもとで経済が悪くなる、しかし、それが円高をもたらすという普通に考えることとは違うことが起こるわけですね。
 これは、アメリカやアルゼンチンのように海外資本に依存している国が日本の状況のようになった場合は、まず外国資本が海外に逃げていってしまい、それによって通貨安になってしまいますが、ところが日本の場合はもともとお金が余ってしまう黒字国であるということで、日本人がお金を抱え込んでしまうと逆に円高になってしまう力になるんです。
 
 今、「日本を買う材料がないから円安になる」という理論は、正直難しいと思っています。逆説的に言うと「アメリカを買う材料もない」わけですから、ここまでくると日本とアメリカの綱引きの状態なんですよね。ですから、「アメリカの経済もよくないので、ドル安になってる」っていうのは、言葉のとんちみたいですけど、真実なんですよ。
 
 ただ、アメリカ経済が良くないっていうのは事実なのですが、そこらへんにも大きな誤解はありますよね。なんだかんだ言っても、アメリカ経済は今でも3%弱くらいの成長ペースを維持していますし、日本経済はもう苦境のどん底で、欧州は1%そこそこの成長しかない。ですから比べてみると、極端にアメリカ経済だけが悪いっていうことではないんです。
 為替は先ほど書いたように、経済の強弱だけじゃなく、その国の意向も強く反映されてきますが、ではなぜ今ドル安になるのかというと、アメリカには双子の赤字があり、特に経常赤字国で海外からお金を借りなければ立ちいかない国なんです。
 今、世界中の経済成長率が落ちてしまって、経済のいわゆる巡航速度が落ちてしまっています。そうしますと、世界中の投資家がリスクを取って、国境を越えてお金を動かそうと言う気持ちがだんだん薄れてしまっているのです。
 このようにお金の巡りが悪くなると、日本やスイスといった債権国の通貨は上がりやすくなります。アメリカのような国は、赤字国ですからお金が入ってこなくなると、もっとアメリカにお金を入れてくれという圧力のためにドルが安くなって、「アメリカ資産は割安になったから買ってくれ」と海外の投資家に市場が圧力をかけていくということになりますよね。ですから、アメリカ経済がことさら悪いというよりは、世界全体が悪いからお金の流れが悪くなって、その分ドルがいわじわと売られているというのが今の特徴的なところだと思います。
 
 では、今後の為替相場に関してですが、かなり上下動はあると思うんですけど、基本的に今年は円高を維持していくと思います。イラク情勢などによっても多少の修正はあるでしょうけど、3月の決算期までに115円、あとそれがすぎたあとの秋口ごろに110円を突破するような形になるのではないでしょうか。
 テクニカルの分析だと、108円までの円高はありそうなんですけど、それもイラク情勢が終わった後のアメリカ経済の落ち込み度合いによっては100円割れだって心配は心配しちゃいますけどね(笑)。
 ただ、円高になるから日本経済がますます悪くなってるのかというと、それはまた違うと思います。この場面での円高というのは、日本経済に対してだめ押し的なデフレインパクトになると思うので、逆にいうと、そこまで来た場合にはそのこと自体が日本当局に対して、政策転換を余儀なくさせるという側面があると思うんです。日本経済が苦境に陥るとむしろ円高気味になるというのは、マネーがますます動かなくなってしまうという事なんですけど、それに対して特に日銀が大胆に、実際に効力がある実効的な政策を打ち出すようであれば、今年の後半もしくは来年は円安に転換してくると思います。
 
 蛇足になりますけど、本当はユーロに関しても書きたかったのですが、時間がないのと体力がないのとで割愛になりました(笑)。本当に申し訳ありません。為替に関しては、いろいろ意見があると思いますし、僕が正しいというわけではありませんが、個人的なシナリオとしては、2004年か2005年にこの円高の底打ち場面のあと大円安になると思っています。理由言うとよく笑われますが(笑)。
 それでは、また。
 

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